機能安全業務推進は、最新版規格書で進めましょう!
国際規格は、必要に応じ見直しが実施され更新版が発行されています。
機能安全の認証取得及び更新審査時には、最新版の入手をお奨めします。
今回は、産業機械に関する機能安全規格書の更新状況とその概要について、紹介します。
最近の主な産業機械規格書の更新状況
2024年6月現在
規格名称 | 規格番号 旧バージョン | 規格番号 現行バージョン |
Safety of machinery=Safety-related parts of control systems=Part 1: General principles for design | ISO 13849-1 Ed3:2015 | ISO 13849-1 Ed4:2023 |
Industrial communication networks=Profiles=Part 3: Functional safety fieldbuses=General rules and profile definitions | IEC 61784-3 *1) Ed3:2016 /*2) Am1:2017 | IEC 61784-3 Ed4:2021 /Am1:2024 |
Adjustable speed electrical power drive systems=Part 5-3: Safety requirements-Functional, electrical and environmental requirements for encoders | — | IEC 61800-5-3 Ed1:2021 |
Safety of machinery=Functional safety of safety-related control systems | IEC 62061:2005 /Am1:2012, Am2: 2015 | IEC 62061 Ed2:2021 |
Safety of machinery=Electro-sensitive protective equipment=Part 1: General requirements and tests | IEC 61496-1 Ed3:2012 | IEC 61496-1 Ed4:2020 |
Safety of machinery=Electro-sensitive protective equipment=Part 2: Particular requirements for equipment using active opto-electronic protective devices (AOPDs) | IEC 61496-2 Ed3:2013 | IEC 61496-2 Ed4:2020 |
*1) Ed3:2016は、第3版(Edition 3)を2016年に発行。
*2) Am1:2017は、追補・修正1(Amendment 1)を2017年に発行。
更新概要
以下の3つの規格書について、更新概要を紹介します。
IEC 61800-5-3 Ed1:2021
Adjustable speed electrical power drive systems –
Part 5-3: Safety requirements – Functional, electrical and environmental requirements for encoders
これは、安全エンコーダ用に機能安全要求事項をまとめた規格書です。
従来エンコーダに関する要求内容はIEC 61800-5-2(可変速パワードライブシステム(PDS)-安全要求事項-機能安全)を引用し行っていましたが、新たにエンコーダ専用の製品規格書が発行されました。
エンコーダの種類、電気要求、機構要求、障害リスト、環境要求などエンコーダ特有の要求事項が網羅されました。
エンコーダの設計・開発の要求事項については、基本的にはIEC 61800-5-2 6章の可変速パワードライブシステムの設計・開発の要求事項を適用し、一部エンコーダ専用の内容をIEC 61800-5-3に置き換えています。
従いまして、エンコーダはIEC 61800-5-3とIEC 61800-5-2を併用することになります。また、必要に応じ他の規格書(例えば、IEC61800-5-1, ISO 13849-1、IEC 61508-3)も引用します。
IEC 61784-3 Ed4:2021/Am1:2024
Industrial communication networks – Profiles –Part 3: Functional safety fieldbuses – General rules and profile definitions
これは、産業用機能安全フィールドバスに関し、安全関連メッセージを送信する際に使用するいくつかの共通原則について定義しています。これはブラックチャネルアプローチに基づいています。
安全通信系の残留エラー率は、安全機能故障率全体の1%以下が要求されています。 下図参照。
Edition4は、このFSCP(機能安全通信プロファイル)の残留エラー率に関する設計手法や算出方法がより詳細に定義されました。
残留エラー率算出方法は、通信エラー種類別の残留エラー率を合計した値に変更されています。
合計残留エラー率λSC=RRT+RRA+RRI+RRM
RRTは、適時性エラーの1時間あたりの残留エラー率。
RRAは、認証性エラーの1時間あたりの残留エラー率。
RRIは、データ整合性エラーの1時間あたりの残留エラー率。
RRMは、マスカレードエラーの1時間あたりの残留エラー率。
各残留エラー率の計算手法が載っていますので、規格書をご確認下さい。
ISO 13849-1 Ed4:2023
Safety of machinery — Safety-related parts of control systems —Part 1: General principles for design
これは機械制御装置の安全関連部に関する設計要求です。
今回は、制御システム設計と開発プロセスにより適合するよう、文書全体を大幅に再構成しています。
従来は文書の中に散らばった条項の中から、必要な項目を探して設計を進めていく必要がありましたが、今回の改訂により条項番号順に業務を進めていけば設計~妥当性確認~安全マニュアルまでスムースに行える構成になっています。
従来ISO 13849-2に分かれていた妥当性確認もこの規格に取り込まれました。
また、付録ではL~Oが追加されました。
付録 L (参考) 電磁干渉 (EMI) 耐性
付録 M (参考) 安全要求仕様 (SRS) の追加情報
付録 N (参考) ソフトウェア設計における系統的障害の回避
付録 O (参考) 制御システムのコンポーネントまたは部品の安全関連値
2015年版から早めに切り替えることで、業務推進の大幅な手助けなると思います。
作成:株式会社セーフィティイノベーション
問い合わせ先:Info@safety-innovation.com